ひとり日和 青山七恵

ひとり日和

ひとり日和

 今、私の中で歴代の芥川賞を読むことがブームになっています。
 大学図書館にある文藝春秋で、ここ2年ほどのバックナンバーを読めるので、最近の芥川賞はそこで。
 だいぶ前藤野千夜芥川賞をとった時、作家に何故輝く力がないのか、と評した石原慎太郎と同じ気持ちを、最近の芥川賞に対して思っていましたが、この作品は輝く力のない代わりに、とても洗練された現代的な、「良い小説」でした。何よりもその言葉がしっくりくる。

 やっぱり比喩力って、人間の持つ感性からくるもので、才能だと思うのです。どんなに文章が巧くても、比喩の巧くない、空気を文章に変換する能力の弱い人の書く小説は面白くない。この作家は空気を文章に変換するのが類稀なく巧い人です。しかも隙がありません。

 孤独を巧く書く作家だ、という選評もありましたが、私は柳美里の『石に泳ぐ魚』を読んだ時も孤独を書くのが巧いなぁ〜と思いましたし、この作品に対してもそう思ったけど、孤独、これが現代的。現代の持つ孤独は、柳美里の書く孤独ではないのです。人がまわりにたくさんいる孤独。都会に暮らす現代人なら必ず一度は感じたことのある孤独です。

 なんかやっかいな主人公だし、そうだそうだーブログを読んでいるような感触の小説でした。上質なブログ。って何だ。