そういえば今日は、大きな戦争の終わった日だった。
 お盆や正月は、哀しい時期だった。今までの私にとって。
 道行く、見ず知らずの家族連れが楽しそうにしているさまは、私にとっては苦痛以外のなにものでもなかった。今までの私にとって。
 今の私には彼がいる。だのに。
 私はまたみどりの人のことを忘れられず苦しみ、憎悪や執着や色んな感情を胸に渦巻かせ、右目は泣き腫らし充血して白眼は赤く混濁していて、ひどいありさま。ひどい私。
 彼のことを分かろう、とは思っているのに巧く出来なくて、いつも彼を哀しませてしまう。彼は私のために色々なものを失ったはず。
 みどりの人のことを忘れよう、と頭では思っているし、体もちゃんと行動している。私は彼の誘惑をはねのけた。だのに。
 なんでこんなに苦しいのだろう。なんで見ず知らずの人々の幸福がこうも私を苦しめる?
 いちばん楽な方法を考える。消す。消去。
 でもそんなことはできない。でももういやだ。哀しませること、哀しいこと。殺してしまいたいくらい好きなこと。彼はつらい過去も自分を形成した一因で、それがあったから自分たちもめぐり合えたと言うし、それは正しい。けれどいま、私とあなたを苦しめているのはその過去なんだ。そんなもの、全部全部消えてしまえばいいのに!