こんにちは私

 実家に帰っています。今夜は家でロールキャベツを作ろうかと。暗いのでたたみます。

 元彼とはずっと微妙な関係が続いていて、毎日電話やメールをするし会ったらホテルには一緒に行くけど、彼女のことがずっと頭にあって。彼には私よりも大切な誰かがいて、私と会っているのは慈善事業みたいな部分もあるのだと。(別れるとばっさり切ったら、きっと私は自殺すると思ってる)それは理解していたつもりだった。でもはっきり言われると、そうだったのか、と脳味噌がぐらぐらする。みどりの人でさえ、私と会う理由はただ、私に会いたいだけだった。
 じゃあ彼の幸せのために、私はやっぱり彼から離れないといけない。でもそんなことをして、私はこの先大丈夫なのだろうか。もうすでにたくさんのことが手につかない。他のことを何も考えられない。

 私の彼への気持ちは恋ではなくて、それよりもっと大きくて重い、生きる意味のようなものだった。だから毎日失うことが怖くて、やたら不安定になる時もあった。今思えば、去年1年間は私の人生のなかで最も幸せな年だった。夜の煌めく春があって、夏の神戸で雷鳴を聞いて、秋には天六で食べ歩いて、冬は寒いのに何かにくるまれて温かかった。その日々を与えてくれた彼に感謝したい。でも感謝して終わりたくはない。もう失うのは嫌なのに、私は最も大切なものを失ってしまった。


 実家に帰ると、私はひとりではないんだと感じる。ひとりで泣いてても、犬がそっと傍に寄ってきてくれる。24年間暮らした古い家の壁が、木の匂いが、黴臭さが、西日が、私にここにいてもいいんだよと言ってくれているような気がする。

 でも京都に帰れば、またあの明るい光の射しこむ部屋で、私はひとりだ。彼の残していった歯ブラシを見つめながら、私はひとりで耐えられるんだろうか。耐えられるなら何にでもすがりたい気持ちがある。何でもいいからすがりたい。それが何でもいい。
 こうやって辛い思いまでして、何で生きているのだろうと感じる。生きることに意味なんてないのなら、さっさと消えてしまいたい。