指輪

 きみにもらった指輪を久しぶりに指にはめてみる。私の指の指輪よ、とか語りかけてみる。
 でももう何も話せないし発しない、その指輪は。
 あのころは幸せだったと、そう思う。でもそれは不幸な感傷ではなく、じんわりと温かい。
 静かな森をくれてありがとう、とそれだけを思う。