ウェディングドレス

池田理代子短篇集 (3) (中公文庫―コミック版)

池田理代子短篇集 (3) (中公文庫―コミック版)

 池田理代子の短篇集のなかに、ウェディングドレスという作品があります。30代後半で、ずっと恋人もいなくて、仕事ばっかりしてきた女性が、友人の兄に恋をして、最後は女性が自分のキャリアに納得して終わるんですけど、そのなかでその女性は結婚する女友達に対してこんなことを思うんです。
「幸福になるのが驚くほど上手な人だということを、羨望させられる」
 妬みでも何でもなく、その女性は普通にそう思う。その気持ちがよく分かる。自分も結局そうなんだなぁと思うからです。幸せになるための紐を自分から手放しているみたい。
 今日のバイトで、担当した個室のお客さんは今日プロポーズして成功したようで、私は笑顔でおめでとうございますと言ってその時はとても嬉しかったけど、自分のことを考えると情けなくもなりました。何故でしょう。
 私は人と付き合っていくのが上手な人間ではないし、恋人をつくるのはとても疲れるのです。



 先週の日曜日の夜、私の心は私の体を見捨てようとしました。
 でも最後の最後で、両手が私を見捨てませんでした。私は体が可哀想で泣きました。体は自分とは別個のものだと思っているみたいです。

 その夜から、全身にじんましんが出ました。私は、体を傷つけようとした罰だと思いました。私は体を、見捨てようとした。どんな哀しい朝でも、食事を摂ることをやめなかった体を、心は見捨てようとした。

 とても哀しくなりました。とても、哀しくなった。

 だからとりあえず、理性のあるうちは体を見捨てません。私の体よ、あの時は許してね。仕方なかったんだ。